実家がゴミ屋敷になっていく状況は、多くの家族にとって深刻な悩みです。特に、その中心に母親がいる場合、問題は一層複雑になります。長年住み慣れた家が物で溢れかえり、衛生状態が悪化していく光景は、家族の心に深い影を落とします。なぜ母親はゴミ屋敷にしてしまうのでしょうか。その背景には、単なる片付けられないという理由だけではない、様々な心理が隠されていることが多いのです。最もよく見られる心理の一つに、物を捨てることへの強い抵抗感があります。これは、過去の経験や思い出と物を結びつけているケースが多いです。例えば、幼い頃の貧しかった記憶から、「いつか使うかもしれない」「もったいない」という気持ちが捨てられない原因になることがあります。また、子供たちの成長の証である品々や、亡くなった家族の遺品などを大切に思うあまり、手放せなくなることも珍しくありません。これらの感情は、物に対する執着へと繋がり、結果として家の中に物が蓄積されていく状況を生み出します。さらに、孤独感や喪失感といった感情も、ゴミ屋敷化を加速させる要因となり得ます。例えば、夫との死別、子供たちの独立、友人との関係の希薄化など、人生の大きな節目で精神的な支えを失った際に、物が心の隙間を埋める代わりになってしまうことがあります。新しい物を買うことで一時的な満足感を得たり、身の回りにある物に囲まれていることで安心感を得たりする心理が働くのです。この場合、物は単なる物質的な存在ではなく、精神的な安定を保つための防波堤のような役割を果たしていると言えます。うつ病や認知症といった精神的な病気が、ゴミ屋敷化の引き金となることも少なくありません。うつ病の場合、気力の低下や無気力感が片付けや掃除への意欲を奪い、家事が滞る原因となります。また、判断力の低下や意欲の喪失は、物を捨てる決断を難しくさせます。認知症の場合は、物忘れがひどくなることで、どこに何を置いたか分からなくなり、結果として同じ物を買い込んでしまったり、不要な物を溜め込んでしまったりすることがあります。